コラム

知り合いから不動産を買うときの注意点|個人間売買の流れと所有権移転登記の手続き

2026年10月30日 オーナー向け

「知り合いが手放すアパートを譲ってもらうことになった」「親しい人から土地を買いたい」――このように、不動産会社を通さずに個人間で不動産を売買するケースは珍しくありません。仲介手数料がかからないのは大きなメリットですが、本来は不動産会社が担う調査や書類の作成、手続きをすべて自分たちで行う必要があります。

この記事では、知り合いから不動産を買い受けるときの注意点と、所有権移転登記の手続きの流れをまとめます。

個人間売買のメリットとリスク

メリット リスク・注意点
仲介手数料がかからない(売買価格が400万円超なら上限は「価格×3%+6万円+消費税」) 重要事項説明がないため、物件の調査を自分で行う必要がある
価格や引渡し時期などの条件を柔軟に相談できる 契約書の不備や口約束が、あとでトラブルの原因になりやすい
物件の使われ方や経緯を、売主から直接詳しく聞ける 住宅ローンなどの融資が受けにくい場合がある
— 知り合い同士のため、問題があっても指摘しにくく、関係が悪化するおそれがある

特に融資については、金融機関の多くが審査に不動産会社の作成した重要事項説明書を求めます。ローンを使う予定なら、契約前に金融機関に個人間売買でも利用できるか確認しておきましょう。

契約前に確認すること

「知り合いだから大丈夫」と思っても、権利関係や法令上の制限は書類で確認するのが基本です。最低限、次の点を押さえておきましょう。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本):法務局やオンラインで取得できます。所有者が売主本人か、共有者がいないか、抵当権などが残っていないかを確認します。
  • 公図・地積測量図と境界:隣地との境界標があるか、境界が確定しているかを現地とあわせて確認します。
  • 法令上の制限:市区町村の窓口で、用途地域や建ぺい率・容積率を確認します。建物を建てるには、原則として幅4m以上の道路に2m以上接している必要があり(接道義務)、満たさない土地は再建築できないことがあります。
  • 建物の状態:雨漏り、シロアリ、設備の故障などを確認します。築年数が古い場合は、専門家による建物状況調査(インスペクション)も検討しましょう。
  • 固定資産税の評価額と納税状況:固定資産評価証明書で評価額を確認します。登記や税金の計算にも使います。

売買契約書で決めておくこと

個人間売買でも、口約束で済ませず必ず売買契約書を作成します。次の項目は具体的に書いておきましょう。

  • 売買価格、手付金の額と、手付解除ができる期限
  • 代金の支払い方法と時期、引渡しの日
  • 所有権移転登記の時期(代金の支払いと同時に行うのが原則)
  • 固定資産税・都市計画税の精算方法(引渡し日を基準に日割りで精算するのが一般的)
  • 抵当権などが残っている場合の抹消の方法と期限
  • 契約不適合責任の扱い:引き渡した物件が契約内容に合わない場合(雨漏りや設備の故障など)の売主の責任です。個人間では免除や期間短縮の特約も可能ですが、売主が知りながら告げなかった不具合は免責されません。
  • 賃貸中の物件なら、賃貸借契約と敷金の引継ぎ(次の章を参照)

なお、売買契約書には印紙税がかかります。不動産の売買契約書には軽減税率が設けられていますが、期限付きの特例のため、作成時点の税率を国税庁のサイトで確認してください。

賃貸中の物件を買う場合のポイント

入居者がいるアパートや貸家を「オーナーチェンジ」で買い受ける場合は、次の点にも注意が必要です。

  • 賃貸人の地位は引き継がれる:所有権移転登記をすると、賃貸人の地位は原則として買主に移り、入居者の同意は必要ありません(民法第605条の2)。
  • 敷金の返還義務も引き継ぐ:退去時の敷金返還義務は新しいオーナーに移ります。預かっている敷金の額を確認し、売買代金で精算するのが一般的です。
  • 賃貸借契約書と入居者情報を受け取る:契約書の原本、家賃の入金状況、滞納の有無、更新時期、保証会社との契約内容などを確認しておきます。
  • 入居者への通知:オーナーが変わったことと、新しい家賃の振込先を書面で知らせます。旧オーナーと連名で通知すると入居者も安心です。

価格の決め方と税金の注意点

知り合い同士だと、相場より安い価格で売買することもあります。しかし、時価に比べて著しく低い価格で買い受けると、時価との差額が売主からの贈与とみなされ、買主に贈与税がかかる場合があります(みなし贈与)。親族間や親しい間柄の売買では特に注意し、近隣の取引事例や不動産会社の査定などを参考に、価格の根拠を残しておきましょう。

買主が負担する主な税金は次のとおりです。

税金 かかるタイミング 税額の目安
印紙税 売買契約書の作成時 契約金額に応じた額(軽減措置あり)
登録免許税 所有権移転登記の申請時 固定資産税評価額×2%(土地は軽減措置により1.5%)
不動産取得税 取得後、都道府県から通知 固定資産税評価額×4%(土地・住宅は軽減措置により3%、宅地は評価額を2分の1にする特例あり)

軽減措置にはいずれも適用期限があります。取引の時期に適用されるかは、法務局や都道府県税事務所で確認してください。

所有権移転登記の手続き

不動産を買ったら、所有権移転登記をして自分の名義にします。登記をしないと、第三者に「自分が所有者だ」と主張できません。売主が二重に売却してしまった場合などに、先に登記をした人が優先されるため、代金の支払いと同時に登記を申請するのが原則です。

手続きの流れ

  1. 必要書類をそろえる:売主・買主それぞれが下の表の書類を準備します。
  2. 登記原因証明情報を作成する:売買の事実(当事者、物件、売買日、代金の支払い)を記載し、売主が記名押印します。
  3. 決済と登記申請:代金の支払いを確認したら、物件所在地を管轄する法務局に登記を申請します。窓口・郵送・オンラインで申請できます。
  4. 登記完了と書類の受け取り:登記が完了すると、買主に新しい登記識別情報(いわゆる権利証にあたるもの)が通知されます。大切に保管しましょう。

主な必要書類

売主が用意するもの 買主が用意するもの
登記識別情報通知または登記済権利証 住民票の写し
印鑑証明書(発行後3か月以内)と実印 印鑑(認印でも可)
固定資産評価証明書 本人確認書類
本人確認書類 登録免許税(収入印紙など)

※登記簿上の売主の住所・氏名が現在と違う場合は、先に住所・氏名の変更登記が必要です。司法書士に依頼する場合は委任状も必要になります。

司法書士に依頼するのがおすすめ

登記は自分で申請することもできますが、個人間売買では司法書士への依頼をおすすめします。司法書士は売主の本人確認や意思確認、書類の確認を行い、代金の支払いと登記申請を同時に進めてくれます。不動産会社が間に入らない取引だからこそ、「代金を払ったのに名義が変わらない」といったトラブルを防ぐ効果があります。費用は物件や地域によって異なりますが、事前に見積もりを取って確認しましょう。

まとめ

知り合いからの不動産購入は、仲介手数料がかからず条件も相談しやすい一方で、物件の調査、契約書の作成、登記の手続きをすべて当事者で行う必要があります。登記事項証明書などで権利関係を確認する、契約内容を書面に残す、代金の支払いと登記を同時に行うの3点を押さえ、必要に応じて司法書士や税理士などの専門家の力も借りながら進めましょう。

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